凍結胚を移植する場合は、体外受精の時の様に卵をたくさん育てる必要はないので、注射をたくさん打ったり、こまめに診察や検査をする必要はありません。大事なのは、内膜の出来具合と、移植のタイミングです。
胚移植するタマゴは採卵日から何日目に凍結したかによって発育ステージが異なるので、それに合わせて、胚移植の日を調節する必要があります。
内膜を準備する方法としては2通りの方法があります。
1つは、普段の月経周期にあわせて、排卵日=採卵日として日数を合わせて胚移植する方法。
2つめは飲み薬で内膜を作って胚移植する方法。
1つめの方法は、いつも通りの月経周期で排卵日を特定して、凍結している胚の日齢に合わせて胚移植します(排卵周期)。
排卵が起きるということは、卵胞が育っている間に内膜も一緒に育ってくるので、これを利用します。自然妊娠と同じ状況ですね。体外受精の新鮮周期で行う胚移植も同じ理屈です。例えば胚を採卵5日目に凍結したとすると、胚移植は排卵5日目に行うということになります。
この周期の場合は排卵日を特定しないといけないので、体外受精ほどではありませんが、排卵日の確認のために何度か受診が必要になります。
通常は月経周期の2-5日目頃に受診して頂いて、大抵はセキソビッドのような軽い排卵誘発剤を服用します(必要に応じて、hMGの注射が必要になる方もいます)。
それ以後は、その方の卵巣の反応性によって卵胞発育に早い・遅いがあるので、来院回数の特定はできませんが、超音波や血液・尿検査で卵胞が排卵しそうなことを確認したら、hCGという注射で排卵を誘起します。その数日後、診察で排卵が確実に起きたことを確認したら、胚移植が決定し、移植日と胚の発育ステージを合わせて胚を解凍します。
この周期は排卵が起きている周期なので、卵巣の中にちゃんと黄体もできています(卵胞発育のために排卵誘発剤を服用するのは、内膜やこの時に出来る黄体の質を少しでも良いものにしたいからという理由もあります)。
黄体ホルモンが足りないと、妊娠後はそれを補うために、注射が毎日発生する(この注射は普段より痛い!)ことになりますが、この周期の場合はもう一方の周期に比べると、注射が必要になったとしても短期間で済んだり、安定期に入るまでに出血を起こすことが少ないといった利点があります。
ただし選択できる条件として、排卵が起きること、かつ内膜がちゃんと厚くなることが必要になります。つまり、どんな薬を使っても、どーにもこーにも排卵が起きない方の場合は、最初から組むことができません。
それから、排卵は起きるけど、内膜が薄い(8mm以下)場合も仕切り直しになることがあります。その場合は、もう一方の周期で厚くなるかどうかの保証はできませんが、方法を変えてみるという意味で後述の飲み薬で内膜を育てる方法を選択することがあります。
通常、特別な理由がなければ、こちらを選択することがほとんどです。
2つめの方法は、飲み薬で内膜をつくる方法(HRT)です。
月経周期の2-5日目に受診して頂いて、プレマリンというエストロゲンの薬を開始します。最初の4日間は1錠ずつ、次の4日間は2錠ずつ、次の4日間は3錠ずつ。
これは、本来の月経の場合に、卵胞発育に合わせて徐々にエストロゲンの分泌量が増えるという体内の環境を、薬で再現していると考えていただくと解りやすいです。
この間、内膜は育ちますが、卵胞は発育しないので、排卵を確認するために受診したり検査が必要になることはありません。
プレマリンの飲み終わりごろの診察で、内膜が十分育っていれば胚移植決定。培養室へ胚をいつ解凍するのか連絡が入ります。
プレマリンの終了後、内膜が排卵後の内膜へ変化するように促すためにプラノバールを胚移植まで服用していただき、胚の日数を合わせて胚移植します。
1つめの方法と同様に、途中の診察で内膜が薄いままの場合は、仕切り直しとなります。
この周期の良い点は、飲み薬のみで内膜を育てるので、頻繁に受診する必要がなく、周期のスタート時に胚移植日を決定することができること、
排卵が起きない/起き難い方でも、対応可能なことです。欠点は1つ目の方法の利点が全くないこと、つまり、排卵が起きないということは卵巣に黄体ができないので、妊娠した後はこれを補うために、注射がほぼ毎日発生することになること、出血等を起こしやすいなど、安定期に入るまでは黄体補充をしっかり行う必要があります。
基本的には、排卵周期の方が妊娠後の管理が圧倒的に安定しているので、そちらを選択・お勧めすることが多くなりますが、どうしても通院が大変などの方の場合は、希望によってHRTを選択する場合もあります。
>>次回へ続く